中小企業の「後継者不在率」は55.6% 東京商工リサーチ調べ
2020/01/31
東京商工リサーチが昨年11月に公表した2019年「後継者不在率」調査によると、中小企業で後継者が決まっていない「後継者不在率」は55.6%となり、半数以上の企業に及ぶことが分かった。
この調査では、東京商工リサーチの企業データベース(379万社)のうち、2017年以降の後継者に関する情報が蓄積されているデータから19万521社を無作為に抽出。事業実態が確認できた企業で、後継者が決まっていない企業は10万5942社(55.6%)だった。
代表者の年齢別で「後継者不在率」を見ると、代表者が30歳未満の中小企業は92.9%と最も多かった。これは今すぐ後継者を見つける必要に迫られていないことが要因だが、注目したいのは、事業承継が喫緊の課題となっている60代以上の不在率だ。代表者が60代の中小企業の不在率は40.9%、70代は29.3%、80代でも23.8%となっており、代表者が高齢でも後継者が見つかっていない企業が多いという実態が浮かび上がった。
また、産業別に「後継者不在率」を見てみると、小売業が5 9 . 3%、建設業が54.9%、運輸業が52.2%となっており、人手不足の影響を大きく受けている業種で後継者難が目立った。東京商工リサーチでは、「この状況が続くと、新設法人数が減少している『小売業』は衰退し、国内市場の拡大と健全な競争環境の維持に影響を与えかねない」と分析している。
「後継者不在」の10万5942社に中長期的な承継希望を尋ねたところ、「未定・検討中」が5万8772社(構成比55.4%)で、事業承継の方針すら明確ではない、あるいは計画できていない企業が半数を超えている。だが、2017年版の中小企業白書によると、後継者の選定から了解を得るまでに要する期間は、承継準備が不十分な場合、「3年以上」かかったケースが過半数に達している。そのほかにも事業承継を終えるまでには長い期間が必要となるため、代表者が高齢になればなるほど時間的猶予は短くなってくる。
近年、中小企業の間でも事業承継の手段としてM&Aを選択するケースが増えつつあるが、今回の調査によると「会社を売却・譲渡」したのは215社(同0.2%)、「外部からの人材招聘と資本受入」は145社(同0.1%)にとどまった。東京商工リサーチは、「事業承継の相手が親族や従業員以外の場合、頭では理解できているとしても、経営や資本受け入れ(売却)への抵抗がかなり根強いことがうかがえる」と指摘している。
とはいえ、2018年の「休廃業・解散」企業数は過去最多の4万6724社を記録しており、その中には後継者が見つからず、やむを得ず休廃業したところも少なくない。また、中小企業庁によると、今後10年の間に70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定で、現状を放置すると、中小企業廃業の急増により2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると推計されている。
東京商工リサーチでは、「当面、経営者の高齢化や生産年齢人口の減少に歯止めがかからないだけに、持続的な経済成長の維持には事業譲渡やM&Aを含む事業承継の促進が一段と求められる」と指摘している。